シャトルシップ運行が決まってから1週間。 東呉市庁舎および広陵村役場では船の運航に関して慌しく課員たちが動いていた。
そんな時、一緒に運航のための準備をしていた周瑜が大声を上げた。 「あぁ!なんて私はバカなんでしょう!」 廊下のど真ん中でこんな大声を張り上げるもんだから、周りの人は珍獣のようにジロジロ見ていった。 「なんということだ・・・!」 意味深な言葉を発しながらひたすら村長室へかけていく周瑜。 長髪をなびかせて走る姿は美麗であるが、 奇声を発して走る姿は頭がおかしいのではないかと思えてしまう光景である。
「は、伯符伯符!」 「何だ公瑾。そんな大声出して。さっきから聞こえてたぞ」 「私たちはバカです!」 「そりゃ俺はバカだから、バカと言われても仕方ないが」 「そうじゃないんですよっ!何で今まで誰も気付かなかったんでしょう!あぁ。神はわれを見捨てたか(違)」 「ええぃ、どこかのセリフをここで使うんじゃない!で、言いたいことは?」 「私たちはまだ港も建設してなかったのですっ!」 「あぁっ!!」 その瞬間、孫策まで大声を出した。 はっきり言って間抜けな連中である。 「なんと言うことだ!周瑜、今すぐ呂蒙と陸遜を呼んで来い!」 「ハイっ!」 周瑜が部屋から出て行ったのを見てから、孫策は電話を取った。
「おっ、権か。実はな、ここ広陵に港を建設してなかったのだ!」 『兄さんたちはなんというバカなんでしょう!港なくして船を走らせることができますか!』 「だから、今から許可を取って港を建設するのだ。もちろん、港は簡潔なものにするつもりなので2週間ぐらいで終わる」 『早くしてくださいね!こっちはもう船も購入しましたよ』 「・・・で、東呉に港なんかあったか?」
『何を言ってるのですか!東呉には2つの港がありますっ!』 「・・・そうか。で、どっちの港にするんだ?」 『東呉西港が良いでしょう。広陵からの直線距離も近いですし』 「ではその"とうごせいこう"とやらに船を入れる準備をしておいてくれ」 『ちょっと待ってください兄さん、あなた、本当に大丈夫ですか?』 「ん?何がだ」 『・・・いや、地理は大丈夫かな?と思って。東呉西港は有名な貿易港ですよ』 「・・・どうでも良い。とにかく、船を入れる準備をしておけ。じゃ」
そう言って電話を置いたら、すぐに周瑜たちが入ってきた。 「今、課長は議会へ行って許可を取っています」 「だが、今気付いたのだが予算案は出ないだろう?」 「大丈夫です。コチラで用意した臨時予算を使用して建設します」 「果たして議会を通るやら」 「まぁ、シャトルシップの運行について許可を貰ってますから、議会は通るでしょう」 「しかし、そう早く議決結果は出ないだろう」 「いえ、臨時予算の場合は即座に議決結果が出る仕組みになっています。もう30分ほど待ちましょう」
――30分後。
「村長!議会から許可を貰いました!」 「よーし、では周瑜、魯粛を呼んで書類を書かせろ。陸遜、お前は建設課へ行って建設の許可を貰って来い」 「「はい!」」 そしてしばらくした後魯粛が周瑜につれられやってきた。 「・・・村長、港を建設しないで船を走らせようなんていうことを考えていた私たちはバカですね」 「魯粛、その話はもう終わったのだ。ここにこれだけの書類がある。これすべてに目を通してもらいたい」 「・・・・」 その書類の山を見たとたん、魯粛の顔から血の気が引いていくのが見えた。 「ま、頼む」 「ま、頼む、と言われましても、そんな簡単に終わるものじゃありませんよ、これ」 「そういわれてもなぁ・・・」 そううだうだ口論している間に、陸遜がやってきた。 「建設課の許可を貰いました。急いで工事をするように言ったところ、1週間後には完成するそうです」 その答えを聞いたとたん、パッと孫策の顔が明るくなった。 「さぁ!今日は飲みにでも行くか!」 「誰のせいでこんなことになったのやら」 ボソッと魯粛が放った言葉は孫策に聞こえたのやらどうやら。
(おまけ:居酒屋にて) 「なぁ子明」 「何ですか村長」 「東呉西港って知ってるか?」 「有名な貿易港ですが・・・?」 「・・・そうか。伯言、東呉西港って知ってるか?」 「何をとぼけたことを!東呉一の港ですよ!」 「・・・やっぱりそうか」 「伯符は地理が苦手ですからねぇ〜」 「・・・公瑾、そう大声で言うな・・・」 「「「えー!村長!東呉西港知らなかったんですかぁ〜!?」」」 「・・・・・・・・・・・・」 これ以後、孫策は地図帳を見ながら寝るようになったとさ。おわり。
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