第一回会議が終わってから2週間。 ようやくここ、広陵にも真夏が訪れた。
「あぢぃーー」 うちわをパタパタ仰ぎながらPCに向かってるのは孫策。 「公瑾〜、クーラーかけないか?」 「まだそんな暑さじゃありません」 ちょっとしたケチが垣間見えた瞬間である。 「だってよぉ、もう35度行ってんだぜ?クーラーかけても良いんじゃないか?」 「ダメです。クーラーは36度以上にならないとかけれません。あと1度ちょっとあるでしょ」 「う゛〜」 目線をPCの画面から温度計にうつし、温度計と睨めっこしながらひたすらうちわを仰ぐ。 ―そこへ ふと魯粛が現れた。 「村長、失礼し・・・暑っ!!」 村長室のドアを開けると、むわっと熱気が漂ってきた。 「そ、村長!?あまりにもこの部屋は暑すぎませんか?」 「うむ。そのことをさっきから公瑾に言ってるのだが、頑としてクーラーはかけんのだよ」 「伯符、あまりクーラーをかけすぎると電気代が馬鹿になりません。いくら資産があるといっても、浪費するとすぐなくなってしまいます」 「いや、それもそうですが周瑜さん、この暑さじゃ・・・もう良いんじゃないですか?」 魯粛が孫策からうちわをぶんとり、ひたすら自分を仰いでる。 「公瑾、今36度になったぞ」 「そうですか。ではクーラーをかけますか」 ブウォーーーとエアコンが鳴り出し、しばらくすると冷風が流れてきた。 「・・・でですね、私はクーラーの苦情を言いに来たのではありません。重要な話があってきたのです」 「重要な話?」 孫策がエアコンから流れてくる冷風の当たる場所に立ちながら質問する。 「ええ。2週間前、とある議題で会議をしましたよね?」 「ああ。シャトルバスの話か」 「そう。それです。で、その件について東呉市と話してみたところ・・・」 「ところ?」 孫策が少しわくわく気味に答える。 「却下されてしまいました」 「却下ぁ〜?」 孫策と周瑜が声そろえて言う。 「ええ。この続きは、総務課の会議室で行いましょう」
クーラーのがんがんにきいた総務課会議室。 上座には孫策、周瑜、下座には呂蒙、陸遜、魯粛と並んでいる。 「で、却下というのはいったい・・・?」 早速孫策側から話を切り出す。 「えーっと。先週東呉市に手紙を出したところ、このような返書が返ってきました」 「ん?どれどれ・・・」 その手紙の内容とは
「東呉市と広陵村とを連結するシャトルバスおよびシャトルシップの案は、東呉市として却下する。 理由は、シャトルバスだと利益が上がらず、ただの赤字路線になってしまうから」(部分要約)
と書いてある。 「なるほど・・・シャトルバスは無料運行ですからね。赤字は必至です」 「んじゃ、無料運行にしなければ良いのか?」 「けれども、それだと誰も乗ってくれません」 「・・・となると、当然シャトルシップも無理だな。船のほうが金かかるし・・・」 「それに、船だと海路が荒れる場合もありますからね・・・」 周瑜が苦し紛れに言う。もはや手立てはないのか。 「んー・・・とにかく、今のところ市営にしておくとか・・・」 「市営・・・と言うなら、公営にしましょう」 「変わらないじゃないか」 間髪いれず呂蒙が突っ込む。 「いや、東呉市、秣陵町、広陵村で共同で資金を出すんです」 「ほぅ・・・」 「バスは3市町村を経由しています。通る市町村から金を出させるのが常識というものでしょう」 人並み外れた常識だなと、周瑜を除いて全員が心の中で思ったに違いない。 「んじゃ、今のところは公営と言うことで、東呉市と秣陵町に手紙を送っておきますね」 私の仕事だといわんばかりに、魯粛が言う。 「それじゃ、魯粛頼んだぞ」 クーラーがききすぎて寒いくらいの会議室から、ゾロゾロと5人出てくる。
―そこへ。 市民課から太史慈が走ってきた。 「村長、大変です!老人連というものの団体が、村長に会わせてくれと玄関の前で座り込みをしています!」 (次回へ続く)
追伸:今回の小説は、ナグロさん、TRTさんから案などを頂きました。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。 |
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