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3.村議会
 

――さて。
保育園建設が決まってから1ヶ月、いきなり村長室に電話がかかってきた。
「あー孫策だ。ふむ、はぁ、えっ?今すぐ行く」
ソファーで寝転がって本を読んでいた周瑜(行儀悪い)が、本の上から顔を覗かせた。
「どうしたんです?伯符」
「いや、いきなり呂蒙から電話があってな。陸遜と太史慈と一緒に総務課で待ってるから来てくれ、というんだ」
「ふぅん・・・なんかただならぬ予感を感じるので、私も行きます」
そういって、周瑜もついてきた。

「・・・で?」
総務課の会議室で4人が集まった。何か重大な話でもあるのだろうか。
「まず市長、先月、保育園建設の許可を貰いましたよね?」
呂蒙が書類を見ながら質問する。
「ああ」
「それはどこから貰った許可ですか?」
思いもよらぬ質問に、孫策は少しうろたえた。
「え?いや・・・えっと建設課と財政課だけど・・・」
「村議会からは貰いましたか?」
村議会ぃ〜?
「ええ。実を言うとかくかくしかじか・・・」
呂蒙の話によると、昨日孫策が帰ったあと、総務課に村議会から電話がかかってきたそうだ。
だれが保育園建設の情報を流したのかは知らないが、怒り狂った声で電話がかかってきた。
怒り狂った声の主は、村議会議長の劉馬
大変厳格な議長として知られ、実を言うと孫策もまだ挨拶に行っていなかった。
「・・・それで、今日、村議会の方へ顔を出せと言うんですよ」
「まぁ、そりゃぁ、顔出せというのも無理は無いな。挨拶にすら行ってないんだから」
孫策たちはすっかり忘れていたのだ。目の前の事柄に気を取られ、
村一番の敵(?)である村議会という存在を。
「まぁ、こうなったら行くしかないでしょう」
村議会は、村役場の横に堂々と砦(?)を構えている。
それも、村役場と2階でつながっている。

びくびくしながら村議会の建物の中へ入り、最上階の議長室へ向かう。
「あのぉ・・・」
「はい?」
議長室前には小さな受付があり、そこで受付をしなければならない。
「村役場から来ました村長の孫策ですが・・・劉馬議長はおいででしょうか?」
「あぁ、孫策さんですね。議長から話は聞いてます。こちらへどうぞ」
「村長だと言うのに、『さん』呼ばわりされましたね」
不機嫌そうに周瑜が言う。
「まぁ、仕方ないだろ」
受付嬢に案内され、応接室へ通される。
応接室の上座では、議長と副議長、秘書が堂々といすに座っている。
「これはこれは孫策村長。赴任してきてはや1ヶ月以上たっているというのに、挨拶にもこないとはいい度胸してますね」
いきなり劉馬から厳しい言葉を貰い、孫策はしゅん、としてしまっている。
「挨拶の件に関しては申し訳ありませんでした。こちらもいろいろ忙しかったので」
周瑜が鄭重にわびる。
「まぁ忙しいでしょうな。村議会にも言わずに保育園建設を決定されたんですから」
「・・・」
これには4人とも黙るしかなかった。
「とにかくお座りください。立ったままじゃロクに話もできないでしょう」
「は、はぁ・・・失礼します」
恐縮しながら、いすに座る。

「挨拶の件は良いとしましょう。で、保育園のほうはいったいどういうおつもりだったんですか?」
「はい、いつかお伺いしよ・・・」
「トンズラしようとしたわけですか?もうあなたが決断されてから1ヶ月以上たってますが?」
まだ孫策が言い終わってないのに、話を割り込んでくる。
「ええっと、それはこちらもいろいろ忙しくて、なかなかお伺・・・」
「忙しい?保育園建設ぐらいしかすることが無かったぐらい暇なんでしょ?」
また言い終わってないのに割り込んでくる。それに、人の弱みをよくついてくる。
これにはかの周瑜も閉口した。
「だ・い・た・い、予算というのは年度始めに決まるものです。こんな突発的に保育園を建設されちゃ、困りますよ」
「はい、それは十分留意しております。」
「留意してるならなぜそんな突発的に建設しようと思ったんですか?まだ予算案も何も出てませんよ?」
「た、確かに・・・まだ私が赴任してきてから1ヶ月ちょっとしかたってませんから・・・」
「今日は7月25日。ようやく1年の半分です。予算案が出るにはまだ半年もありますがどうするのですか?」
「えーっとですね・・・私たちが話し合った結果、今のところは保留にしておこうということで決まりました」
「話す暇があるんだったら、まずは挨拶に来るべきじゃないんですか?」
しつこい奴だ。
「まぁまぁ、議長もそうお暑くならないで・・・」
副議長が横からなだめる。
「とにかく、保留ということにしておきましょう」
「はい、来年の予算案に盛り込んでいただけるよう、よろしくお願いします」
「っていうか、そういうことは議会じゃなくて財政課に言ってほしいんですがね」
この言葉についに周瑜がキレた。
「あんたねぇ、なんていう態度なの?あっちへ行け、こっちへ行け、挨拶しにこい、暇があるならこっちへ来いとか!
 人を何様だと思ってるの?いい加減にせぇ!」
「ま、まぁまぁ・・・落ち着けよ公瑾」
孫策が周瑜の服を引っ張り、忠告する。
「人をコケにしやがって。よくそれで議長やってられたな」
周瑜の怒りはまだ収まらないようで、息が荒い。
「これはこれは、私も失礼しました。ちょっと人を小ばかにするような言動が私の癖なもんで」
議長が謝る。
が、口では謝っているが、心の底では反省していない。表情で分かる。
「まぁとにかく、保育園建設は保留ということでよろしいですか?」
改めて孫策が聞く。
「そうですね。今のところそうしときましょう」
「ではでは・・・」
すべるようにして応接室を出た。
「ったくぅ、何なのあいつ!結構腹立ったんだけど!」
周瑜が怒りに燃えている。
「まぁまぁ、仕方ないじゃないですかぁ・・・」
心の優しい陸遜が必死に周瑜をなだめている。
「世の中にはああいうバカな人もいるんですよ」
周瑜をなだめながら、こんなことを陸遜が漏らした。
「伯言・・・お前、さらっと毒吐くなぁ・・・」
呂蒙があきれたように言う。
「え?そうですか?あはははは〜」

さて、保育園建設が保留になったことにより、開発がストップしたと言っても過言ではない。
そこで、開発に関して会議が開かれた・・・(後編へ)
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